NZ Relationship Property (共有財産)Report 2017よもやま話

仕事柄いろんな分野の法律問題にかかわっていますが、Separationに伴う財産分けもその一つです。Property (Relationships) Act 1976と言う名の制定法がこれを定めたものです。これらの問題は早く解決する場合は3か月くらいで終了しますが、交渉が長引くと1年以上かかることもあります。したがって1件か2件は常にこの案件にかかわっている状況にあります。

この分野の法律は日本のそれとかなり異なりますので、この仕事にかかわる時はNZの法律の説明がまず初めとなります。やってみますとこの分野の日本の法律を知っている人にNZの法律を理解してもらう方が知らない人へのそれと比べて難しいことを経験しました。このいい例がなんと日本の弁護士さんです。この分野を扱う日本の弁護士さんは日本の法律が合理性を持っていると自負されていますので、初めて聞くNZの法律を理解されると言うよりは納得されるのに時間がかかるようです。

交渉の伴う法律業務は一般にクライアントと弁護士間の意思疎通がカギとなります。このために初めはクライアントが持っている日本とNZの法律もしくは一般知識を把握した上で説明していくことが必要です。この知識の中には日本のそれと混同されている人もまれではありません。Separation自体は穏やかな問題ではありませんので、これに至った理由などもお聞きしてそのクライアントの気持ちや性格を踏まえることが結果的にNZの法律をきちっと理解してもらえることにつながります。そしてこの法律理解を通してクライアントと弁護士間の意思疎通が形成され、相手側との交渉力を高めることに繋がります。

さてこの分野の仕事にかかわる中で一般的傾向と考えられる事柄に気付くことがありましたが、何百件ものSeparationに伴う財産分け事案を扱ってきた訳ではありませんのでそれを公に話すのは控えてきました。

最近この拙文のタイトルにありますNZ Relationship Property Report 2017がニュージーランド法律協会によって公表されました。この報告書は400人近くの家庭法を専門とする弁護士がアンケートに答えたものです。この種の研究としては包括的な調査と言えそうですし、やはりそうだったんだと思うこともありましたので、この中からいくつか拾って紹介してみます。

迅速な解決

多くの弁護士がこれらの問題解決に対して重点を置いているのは交渉(negotiation)です。交渉だけでは問題解決が見えてこない場合にはより効果的な解決方法が必要となってきます。この方法として彼らが重要であると位置付けているのは時間と費用のかかる正式裁判ではなく、この分野の専門家である判事を含めた家庭裁判所での速やかな解決(speedier resolution)です。

共有財産法とトラスト法

回答を寄せた60%近くの弁護士は共有財産(Relationship Property)とトラスト法の共通領域についてのよりいっそうの確かな見通しを求めています。これにはちょっと解説が必要です。トラスト法は英米法ではかなり昔から存在する財産に関する法律です。これに対して共有財産の分け方に関する法律は比較的最近に発展してきた分野の法律です。私が弁護士になった後でもかなり大きな改革がなされています。一般に新しい法律が導入されるときには今まである法律との整合性、すなわち矛盾が生じないかどうかは十分に吟味されます。しかしながら「現実は小説よりも奇なり」がどこの世界にもあります。実際のケースが裁判に上がってきますとRelationship Property法でみるとAの結論になるがトラスト法でみるとBの結論が導けると言ったことが起こります。したがってこのようなケースには「裁判官次第です」と言ったアドバイスしか弁護士はできないことになるのを懸念しています。通常これらの問題は判例が積み上げられて見通しの確かさが確保されるようになっていきます。

隠される財産

財産分けが弁護士の手に任されますと交渉の初めの段階でdisclosureと呼ばれる財産の公表をお互いにします。人間関係がうまくいかなくなった時にSeparationが起こり、その後の財産分けですから配偶者が知らないと思われる自分の財産を隠そうとすることが起ります。これは実は私が結構出くわす難しい問題でもあります。結婚してニュージーランドへやって来た女性の場合、夫から手渡された生活費以外は夫がいくら稼いでいて、生活費以外のお金がいくらあるのか、どのように貯蓄されているのか、他の何に使われているのかをよく分かっていない人がいます。

この分野を専門とする弁護士はdisclosureされた財産を法律に基づいて公平に分けることはできますが、隠されている財産を見つけて指摘するのは難しく、弁護士の仕事外のことになります。この問題に対処するために64%の弁護士が財産隠しをした者への厳しい罰則を求めていることから、この問題が現実に多くあると言うことでしょう。

Separationと子供の権利

財産分けを定めたProperty (Relationships) Actの中で、財産分けの決定を下す裁判所に対して子供の権利を考慮するように明確に謳われています。しかしながらほとんどの弁護士は財産分けの過程でこれが考慮されていないと指摘しています。補足しますと子供を誰が日常的に面倒をみるかなどを決めるときには子供自身の権利や意見が大いに尊重されていて、これを実現するために裁判所が子供のための弁護士を指名することもあります。財産分けの段階でも子供の権利を考慮せよとのことのようです。

典型的な離婚者像

この調査の中で見えてきた共通したケースについても記されています。結婚歴が10年から20年、年齢は40歳から49歳、共有財産の価値が$500,000から$1 millionの人が弁護士にアドバイスを求める典型的な人々だそうです。このことは中年の危機(midlife crisis)が今も生きているとコメントされています。ちなみに辞書の中の説明によりますとmidlife crisisとは「中年期に起こる自信喪失、価値観への不安」「特に男性が老化を自覚して無気力になる」だそうです。

最近の傾向

そのほかの興味ある傾向として50歳以上で離婚した人(silver splitters)は結婚前の財産に関する同意書(prenuptial agreements)についてアドバイスを求めることが増えているそうです。もちろんこれは再婚に備えてのことです。この傾向は今後も続き、別れた配偶者との間の子供(成人)との絡みで弁護士にとっては「新しい挑戦」をもたらすだろうと記されています。

離婚の理由

典型的な離婚の理由は愛情の減少(67%)、不倫(52%)だそうです。ただし最近ニュージーランド国中で広く認められる傾向としては家庭内暴力(33%)、アルコールや薬物乱用(30%)などの深刻な問題も反映しています。

世の中の変化に合わせて法律も進歩していかねばならない傾向はこの分野でもより強く求められていると言うことが出来るかもしれません。

ニュージーランドにおける病気休暇の判例

ニュージーランドの雇用法では6か月間の勤務を完了した時点で、先一年間に5日間の病気休暇の権利が生じます。これは自分の病気だけでなく、子供や配偶者などの身近な人の世話のためにも使える権利です。家族みんなが元気で一年間に1日もこの休みを取らなかった場合には最高20日間まで溜める(rolling over)ことができます。

最近見かけた病気休暇の判例を紹介します。日系の自動車会社の機械工Aが病気休暇をたくさん取得したために解雇を余儀なくされたとしてEmployment Relations Authority(ERA:雇用裁判所へ行く前の調停機関)に訴えたところ、①屈辱(Humiliation)、②尊厳の喪失(loss of dignity)、③感情毀損(injury to feelings)が認定され$15,000の賠償金が与えられました。この他にも損失収入(lost income)としていくらかが保証されたようですが、この金額は公表されていません。

Aは230日の仕事期間中30日この休みを取りました。ただし法律の規定以上の日数を使った場合には欠勤扱い、すなわち給与は支払われません。Aの場合、自分の病気もありましたが、彼の奥さん、そして3人の子供ために取られた休暇と言うことでした。ERAは彼以外の誰も子供の世話をできない状況であり、病気休暇を取る時にはその事情を雇用主に説明し、医療情報も知らせていたと裁定しています。

Aの仕事ぶりは平均以上で病気休暇の多さ以外は何も問題ないことを雇用主のBも認めています。

Bは解雇になる以前に2回の警告を与えていました。A が子供の世話で病気休暇を取っている時にBは突然彼の家を訪ねて、なぜ奥さんが子供の面倒を見れないのか聞き、子供が本当に病気であるかどうかを確認しています。さらには子供が病気になったとしてAが早退したときに、BはAの 妻の職場に電話を入れて彼女がそこにいるかを確認していていました。それだけでなく彼女や子供の健康状態を聞き、なぜ夫の代わりに彼女が早退できないのかなどを問い詰めていました。

その後Aは雇用主Bより会社を辞めるか、更なる病気休暇を取らないと合意するかと迫られ辞職しましたが、ERAはこれを事実上の不当解雇と認定しました。

よく休んだり早退したりする従業員は困ると言うのは会社として当然ですが、この対応には雇用法のルールに沿った慎重な対応が要求されてます。この判例では特にAは病気休暇が必要な事情やその証拠にあたる医療情報を示していたとされてますので、嘘をついているかを前提としたような会社の対応は慎まれるべきであったと言えるかもしれません。

月曜日によく病気休暇を取る人がいるとかまことしやかに語られますが、このような場合には会社が会社の費用で医者からの証拠書類を従業員に要求することはできます。

会社が従業員の行為に不満がある場合でも、会社側に特に求められているのは誠意を持った対応 (Good Faith) で、「目には目を」といった短絡的な対応ではERAに行くことになると通用しないということになるかと思われます。職種や事情によってその対応はもちろん異なってきますが、例えばその人が急に休むと仕事の流れに支障が出るとか特定の誰かにしわ寄せがいくということであれば、これをどう思うかとその従業員に相談したり、誰にでも病気休暇は起こりうることですのでこれに対応できる会社の体制を作っておくなどが考えられるのではないでしょうか。

『オークランド日本人会2017年春号に記載』

労働ビザの新しい基準と申請について

2017年7月27日付の移民大臣(Hon Michael Woodhouse)が労働ビザ政策の変更ついて声明を発表しました。前回4月に発表された最低年収額の基準が緩和されることとなり、新政策が施行される2017年8月28日以降、技能職は年収額によって以下3つに分類されることになりました。

 1. 高技能職 – 年収NZ$73,299以上(中間年収額の150%)のいかなる職種
 2. 中技能職 – 年収NZ$41,538以上(中間年収額の85%)で、かつANZSCO(オーストラリアとニュージーランドの職業リスト)で上位レベル1,2,3に指定されている職種
  ※ 前回発表時は、年収NZ$48,859以上(中間年収額)を予定していたが、基準額が高すぎるという業界団体からの声を政府が調整した結果となりました。
 3. 低技能職 – 年収NZ$41,538未満の職種

今後、中技能職の基準に達していない低技能職に該当する申請者は労働ビザに関して、以下の制限を受けることとなります。

 1. 一回で発行されるビザの有効期限は1年以内に限定
 2. 3年間までは更新が可能
 3. 当該ビザ失効後に1年間ニュージーランドから出国しなければならない
 4. 労働ビザと付帯して申請可能だった家族向けビザの申請不可(配偶者やパートナーが就労可能なパートナービザ、子供の就学ビザ)

従って、低技能職に該当する移民労働者は家族をニュージーランドへ連れての就労が実質的に出来なくなった結果となりました。しかしながら、前回4月の発表時点では、中技能職の最低年収基準がNZ$48,859以上で政策が施行される予定であったものが、今回$41,538に引き下げられる結果となり、年収基準に満たない理由でビザ申請を諦めかけていた移民にとっては朗報となりました。ちなみに、$41,538を時給換算すると$19.97となり(週40時間の雇用契約の場合)、時給$20.00をもらっているかどうかが一つの判断基準になります。

例を挙げると、AさんがBレストランからシェフとして年収$42,000のジョブオファーをもらった場合、年収が$42,000なので、中技能職の基準($41,538)を超え、かつシェフはANZSCOでレベル2に該当しますので、中技能職として最長3年の労働ビザが発行され、パートナーや子供のビザも付帯して申請が可能になります。しかし、これまで同様に最も注意しなくてはならないのが、ANZSCOでシェフとして認められるためには一定の基準があり、それを証明しなくてはならないことです。移民局がそれに該当しないと判断するとビザ申請が却下される可能性があります。

 ※なお、上記の年収基準は2017年8月時点のものであり、ニュージーランド政府により適宜見直されることになっております。

労働ビザ申請については、永住ビザとは違い申請すれば比較的簡単に取れるものという認識があるようですが、実際のところ、ビザ申請が却下されてからご相談に来られるケースも少なくありません。現地大学を出て現地企業からの内定が決まった留学生ですら、労働ビザ申請でつまずくこともあります。労働ビザで提出した書類は移民局に記録として残りますので、特に将来的に永住ビザ申請を考えていらっしゃる方は、労働ビザ申請をあまり楽観視せず、慎重に書類証明をご用意されることをお勧めいたします。

ビザに関するお問い合わせは、contact@rosebanklaw.co.nz へメールにてご連絡ください。その後、弊社からお見積りとお打合せの日程について連絡させていただきます。Skypeでの面談も承っておりますので、遠方にお住まいの方にもご利用いただけます。

Rosebank Law
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2017年7月27日 移民大臣声明
https://beehive.govt.nz/release/changes-temporary-work-visas-confirmed

殺人犯のかつら ― 人権の侵害訴訟をめぐって

殺人犯とは正当な理由なしに人を殺した者のことを言い、裁判でその罪が確定した人と言うことは誰でも知っています。ニュージーランドでは死刑が廃止されていますので、基本を無期懲役として仮釈放の申請が許されるまでの期間が通常判決時に言い渡されます。仮釈放の申請をすれば必ず許可される訳ではなく、一定の基準を満たさなかったとして却下されることももちろんあります。却下されると次の申請までに一年は待たねばなりません。

したがって犯罪者が監獄に一定期間閉じ込められることになるということも周知の事実です。この一定期間行動の自由が奪われるという事実をもって犯罪者の基本的人権が侵害されていると主張する人はいないと思います。これは犯した罪に対する罰であり、報いであると考えられるためです。

では若くして禿げている殺人犯が「刑務所の係官が私のかつらを奪ったのは私の表現の自由(freedom of expression)への人権侵害だ」と訴えたら、この正当性はどう裁かれるでしょうか?この裁判が3月に本人(Phillip Smith)である殺人犯によって実際にオークランド高等裁判所へ持ち込まれました。かつらを取り上げた刑務所を訴えたのです。そしてこの結果(判決)、なんと彼がこの裁判に勝利しました。

Phillip Smithの犯罪歴

まずこの確定殺人犯はどんなことをしたのNZ Heraldからひろってみます。Phillipは1974年にWellingtonに生まれました。3歳のときに両親は離婚し、彼のお母さんはCartertonへ移り、彼はお母さんに付いていきました。その後お母さんが再婚しSmithの姓に変わりました。

1980年後半に彼が住んでいるCartertonの同じ通りに小さな子どものいる夫婦が移ってきました。Smithと少年たちは親しくなり、彼は両親からbig brotherと見なされていたと言います。ところが1995年9月に子どもたちは彼から性的ないたずらを過去3年間に渡って受け続けていたことを両親に告白します。「誰かに言えば家族を殺す」と脅かされていたので、子どもたちが受けた被害は文字にするのがはばかれるような内容でしたが長く沈黙を守っていました。

これを聞いて驚いた両親は直ぐに警察に連絡し、Smithから逃れるために夜逃げのようにしてWellingtonへ引越しました。彼はその後直ぐに逮捕、起訴されました。

当初は彼が被害者と接触することを心配して仮釈放が認められませんでした。なぜなら彼の部屋から被害者の家族が逃げたWellington郊外にある学校のリストが見つかったためです。

彼はこの時点ですでに20に及ぶ有罪判決がありました。その中には裁判への証人を火炎びんで脅かして公正な裁判を妨げた罪などがありましたが、高等裁判所に再審を求めて上訴し仮釈放が認められました。

その2週間後にはAucklandの男性への恐喝で逮捕、起訴され再び収監されました。脅かされた男は後に自殺を図ったと言います。この訴訟中に警察から逃げ出し、再び逮捕され、再度仮釈放を認められました。被害者である13歳の男の子と接触をしない、家族の居場所を探そうとしないがこの仮釈放の条件でした。

このような仮釈放条件をSmithは全く無視して、1995年12月11日に被害者家族の住む新しい家に向かいました。ナイフやライフル銃を持って裏庭から忍び寄り、そこで3時間待ちました。これらの武器は1週間前にこの家の近くに隠していたと言います。

被害者である13歳の男の子が彼の部屋にいるSmithに気づき目覚めるやいなや、両親を叫んで呼びました。急いで駆けつけて来た父親をSmithは繰り返しナイフで刺しました。この少年は逃げ出し、近くの警察に助けを求めました。この時Smithは少年の母親と兄弟に銃をつきつけて死にかけている夫へ近づかせないようにしていました。ホラー映画に見るような執拗さではないでしょうか?

その後すぐに逮捕されたSmithは殺人罪で起訴されました。この裁判の中で彼の部屋から殺人への詳細な計画書が見つけられたことが明らかにされました。

長きに渡る少年への性的虐待と彼らの父親の殺人に対する有罪判決をもってしてもSmithはこの家族を苦しめることをやめませんでした。彼は刑務所の中からこの家族に4回も脅しの電話を入れています。彼の独房を捜査した警察はこの家族の名前が記されたhit list(暗殺もしくは攻撃者のリスト)を見つけています。

その後2014年11月にSmithは一時的に釈放されました。この時彼はかつらなどを使って変装しブラジルまで逃亡しています。ちなみに彼が問題にしているかつらはこの逃亡の時に使ったかつらで、以後愛用していたようです。

Smithがどんなことをしてきて、どのような人格かをある程度知った上でこの「かつらはく奪人権侵害裁判」を考えるのが良いかと思い、長いと分かりながら記させてもらいました。

裁判では何が争われたか

さてこのかつらはく奪人権侵害裁判ではSmithが何を訴え、どのような内容が争われたのでしょうか?彼は裁判官に訴えました。「逃亡の後に刑務所に戻った時が私の人生で最悪の時だった。」その理由は逃亡という情けない行為をしたからでも再び捕まったからでもありません。曰く、「なぜならかつらを取られ、禿げのままの自分の写真が新聞の一面に載ったからだ。私は見くびられ、面目を失わされ、屈辱を受けた。」

「もっと恥と思わなければならないことがいっぱい他にあるんじゃないですか?」と突っ込みたくなるコメントですが、Smithは20代から髪の毛が薄くなり始めたので、かつら無しでは人前に出れなかったと言います。にもかかわらず刑務所はなぜ彼がかつらをつけてはいけないのかについて合法的な理由を明らかにせず、これを正当化するために警備上の懸念をおおげさに主張した。木の実をハンマーで叩き割るようなものだ。結果として彼を人間的尊厳をもって扱うことをしなかった。

これに対し刑務所側の弁護士は「刑務所の判断は運営上の問題で裁判所が干渉を控えるべきだ」と述べましたが、裁判官は違った見解を示しました。刑務所はThe Bill of Rights Act (ニュージーランドにおける人権を定めた法律)のもとに保障されているSmithの人権に対する配慮に欠けたと判断しました。先ほども述べましたが、基本的人権である表現の自由(freedom of expression)が侵害されたということです。しかしながらSmithが要求していた賠償は退けられました。

判決への反応

まず一般の反応は「殺人犯のかつらを取ったくらいで、何が人権侵害か」ではないでしょうか?事実、この判決に怒った国会議員の一人は彼のFacebookで「このような男には何の権利もない。刑務所の誰かに頭皮を剝がれればいいんだ。」と扇動的なコメントを載せ、後にすぐに取り下げています。

言うまでもないことですが、殺人犯がいると言うことは殺された人がいるということで、殺人犯はこの被害者の最大の人権である生きる権利を奪った者のことです。The Bill of Rights Actを否定する人はいないと思いますが、この法律が被害者より加害者の権利を守っているのではないかとはこの法律の当初から繰り返されてきた議論ではありました。

この裁判で審議されている争点を「Smithのかつらを取り上げなければ、刑務所の運営上問題があるか」と規定すると、必ずしもそうとは言えないという結論になるかもしれません。一方で子供への性的虐待、殺人、逃亡など数々の重罪を重ねておいて、そんな人間がかつらを取られたぐらいで騒ぐなが一般的な受け止め方ではないでしょうか。

「歎異抄」の有名な一節に「善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや悪人をや。」がありますが、善人は言うまでもなくどんな悪人だってその人権が守られる素晴らしい人権国家二ュージーランドという事になるのでしょうか。

『オークランド日本人会2017年冬号に記載』

永住権およびビザに関するご相談について

昨年、2016年10月11日に技能部門での永住権の申請ポイントの上昇(140点 → 160点)と英語能力試験(IELTS overall 6.5以上等)の提出が発表されてから半年、今度は給与に関する基準が設けられることとなり、永住権およびワークビザを更新・申請される方とそのご家族にも影響が出ることが予想されております。

先週、2017年4月19日に、移民大臣(Hon Michael Woodhouse) から、より良い移民政策の変更(Changes to better manage immigration)と題した発表が行われました。具体的な基準については後日発表されることになっておりますが、大きな変更点としては技能職(Skilled job)に給与基準が設けられたことです。本件について、現在ワークビザを保持されて永住権を目指しているクライアント様にとっては大きな反響があり、すでに多くのお問い合わせをいただいております。

現行ポイント制度で永住権の可能性のある方は、今回の移民政策の変更とに関して現時点お答えできる範囲でアドバイスを行わせていただいております。ビザや永住に関するご相談につきましては、当然のことながら同じ職種であったとしてもクライアント様ひとりひとりが置かれている状況が異なります。したがって、アドバイスをさせていただくにはあらかじめ資料を拝見し、相当の準備時間をいただいてから面談させていただいておりますため、有料とさせていただいております。

お問い合わせは、contact@rosebanklaw.co.nz へメールにてご連絡ください。その後、弊社からお見積りとお打合せの日程について連絡させていただきます。Skypeでの面談も承っておりますので、遠方にお住まいの方にもご利用いただけます。

Rosebank Law
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2017年4月19日 移民大臣声明
https://www.beehive.govt.nz/release/changes-better-manage-immigration