COVID-19ワクチンと雇用の問題

COVID-19のワクチン接種は、雇用、労働環境での安全性や、プライバシーに問題を投げかけています。

NZでは、雇用者は労働者に対して容易にワクチン接種ができる環境を設けるように下記のように促しています。

雇用主は

  • 労働者は勤務時間内に、有給休暇の消化をしたり減給されることなくワクチン接種ができる
  • ワクチンについての国からの情報を提供する
  • Ministry of Health か a District Health Boardに職場でのワクチン接種を求められた場合、それに従う

以下で、いくつかの質問に答えます。

Q. 雇用者は労働者にワクチン接種を強制できますか?

A. いいえ。国からワクチン接種の命令がされていたりCOVID-19に感染する可能性が高い場合のみ、特別な役割をワクチン接種済の労働者に求めることができますが、このような職種はNZではまれです。

 

Q. ワクチン接種が必要な職種な場合、雇用者はワクチン接種をしていない労働者の労働条件や配置を変更することはできますか?

A. 雇用者は労働条件の変更の前に、労働者がその労働条件の変更(勤務地、時間、職務内容、感染リスクの低いポジションへの異動)に同意できるか話し合わなければいけません。また、労働者が妊娠、健康問題などでワクチン接種が不可能な場合、ワクチン接種を延期して、一時的なの代替手段に同意しなければなりません。

 

Q. もし労働者がワクチン接種を拒否した場合、雇用者は労働者を解雇できますか?

いいえ、解雇は他の解決策がない場合の最終手段です。まず、雇用者はその事業内にワクチン接種者済みの労働者でなければ遂行できない業務があるかどうかをCOVID-19感染・拡散リスクを含め判断します。そして業務の感染リスクが高く国からの接種命令がある場合、雇用者は労働者に対し、法的相談、永久的・一時的な勤務条件の変更、様々な休職種類への同意、事業体系・勤務体系の改革、心身不全による勤務不能の問題等を考慮してから解雇について考える必要があります。法的な解雇手続きと法律家による相談なしに解雇することは、雇用の機関により不当解雇と判断されて結果的に経済的に大きな打撃となり得ます。

 

Q. 雇用者は、労働者のワクチン接種が必要かどうかをどのように調べるのですか?

A. 国からワクチン接種命令が出ていないが、ワクチン接種の必要性が考えられる場合には、まず雇用者と労働者がCOVID-19の感染可能性や感染リスクを最小限に食い止める方法を話し合わなければなりません。もし「労働者が勤務中にCOVID-19に感染する可能性」が高く、なおかつ「他人に感染を拡散する可能性」が高い場合は、その業務はワクチン接種済の者によって遂行される必要性が高いです。

 

Q. ワクチン接種が必要な職種の労働者が接種をしていない場合、雇用者が労働者に年次休暇やその他の休暇の取得を要求することはできますか?

A.  年次休暇やその他の休暇の取得は双方が合意した上のものであり、雇用者が合意なしに強制はできません。もし合意が不可能な場合、まだ年次休暇の残日数があれば、雇用者は労働者に対して最低14日前の書面通達によって年次休暇の取得を要求できます。しかし、もし雇用者が労働者に対して無給休暇の取得を要求した場合は、違法に休職させているとみなされる場合があります。

 

Q. もし労働者にワクチン接種が必要な場合に、労働者がワクチン接種の証明を拒否した場合はどうすればいいですか?

A. まず、ワクチン接種するのに障害となり得ることを排除することを考えます(勤務時間外にワクチン接種するのが難しい場合等)。もし国からワクチン接種を命令されているのに、労働者が接種を拒否したり、接種の証明を拒否した場合は、その労働者はワクチン未接種者とみなされ、雇用者はその労働者に対して彼らの雇用においてそれがどういう意味かを説明する必要があります。

COVID-19 Resurgence Wage Subsidy について

8月21日

8月14日、NZ政府はオークランドのCovid-19の警戒レベルを3に、その他の地域のレベルを2に引き上げることを発表しました(8月26日未明まで)。オークランドに関しては、必要最低限の買い出しや、Essential Serviceとされる業種の人の外出除き、外出禁止(ロックダウン)となりました。ただ、最高レベル4の時とは違い、飲食店などは非接触販売(デリバリーやテイクアウェイ)の形で営業を行うことが出来ます。
8月17日、今回の2週間の警戒レベルの引き上げによりビジネスの影響を受けた雇用主向けに新たな政府補助(Resurgence Wage Subsidy)が発表されました。この政府補助は8月21日午後1時から9月3日未明(午後11時59分)まで申請することが出来ます。
Resurgence Wage Subsidyは、これまでの政府補助であるWage Subsidy(12週間)およびWage Subsidy Extension(8週間)とほぼ同様の条件となっております。まず、申請の際、雇用主が対象となる従業員の情報を当局へ提供し、その後、一括して雇用主が補助金を受け取り、各従業員へ補助金を渡す流れとなります。
Resurgence Wage Subsidyの対象となる要点を説明いたします。
1. NZ企業(NGO、Contractor、Solo Traderなど含む)であること
2. NZ国内で営業活動を行っていること
3. 従業員がNZで働く権利があること(Work Visaの承認待ちの人は対象外)
4. 売上の減収を最大限軽減する努力をしたこと
5. 2020年8月12日から9月10日の30日間のうち、14日間で2019年の同期間と比較して40%以上の売上減があること
6. 補助金を受け取っている2週間は、申請に含めた従業員の雇用を維持すること
7. 別の補助金(Wage Subsidy, Wage Subsidy Extension, Leave Support Scheme)を重複して受け取っていないこと(すなわち、Resurgence Wage Subsidyを申請する時点で、まだWage Subsidy Extensionの期間が終わっていなければ、Extensionの期間中はResurgenceの申請はできません。)
詳細は、下記のWork and IncomeのWebsiteをご確認ください。
https://www.workandincome.govt.nz/covid-19/resurgence-wage-subsidy/who-can-get-it.html#null

ワークビザ審査基準の変更について

2020年8月20日

2020年7月27日以降に申請されるワークビザについての基準について説明いたします。

a. 時給中間値による二つの基準(Higher Paid / Lower Paid)
今後、3年のワークビザを取得できるかどうかの基準は、NZ国内の時給中間値(2020年8月時点:$25.50)より多くもらっているかどうかにより審査されます。これまで、3年のワークビザの基準は$21.25以上でしたので、給与の基準がかなり上がったことになります。なお、7月26日以前までに申請されてまだ結果の出ていない分については、引き続き以前の基準で審査が継続されます。

b. ANZSCOの職業リストによる審査の廃止
これまで、申請する業種は、ANZSCOの職業リスト上での資格、実務経験年数、Job Descriptionなどが満たされるかどうかで審査されていたものが、今後ワークビザにおいてANZSCOは使用されないことになりました。ANZSCOのスキルレベル(1から5)によって、3年以上のワークビザ取得が出来ていましたが、上記で述べた通り、今後は時給中間値のみが考慮される形となります。したがて、例えば、ANZSCOレベル2に該当するシェフの場合、時給が$25.50に満たない限り、3年のビザを取得することが出来なくなってしまいます。

なお、永住権(Skilled Migrant Category)では引き続きANZSCOは審査要件として使用されます。

c. 時給中間値未満(Lower Paid)の ワークビザについて
時給中間値に満たない申請者には、本来1年のビザが発行される予定でした。しかし、今回のCOVID-19による影響の政策により、2022年1月までは最大6カ月間しか発行がされないことになったため、半年ごとの更新が必要となります。また、Lower Paidの条件のままでビザを更新し続けて3年を経過すると、一旦NZを出国しなければならず、その後12カ月間はビザを申請することが出来なくなります(Stand-down period)。

二つ目は、雇用主は時給中間値未満の職業をサポートする場合、Work and Income New Zealand (WINZ)からのSkills Match Reportの提出が必須となります。以前は、ANZSCOのレベル4と5に該当する職業のみ必要とされていました。

三つ目は、Lower Paidのワークビザ保持者であっても、パートナーの観光ビザをサポート出来るようになりました。ただし、パートナーのワークビザをサポートするためには、Higher Paidの条件が必要となります。また子供については、時給が中間値未満であっても年収$43,322.76以上があれば、Dependent Childrenとして申請に含めることが出来ます。

COVID-19に対応する移民法修正法案について

2020年5月8日

NZ政府は、2020年5月5日、COVID-19での緊急時に対応を早めるため、現行移民法(Immigration Act 2009)を暫定的に修正する法案(Immigration (COVID-19 Response) Amendment Bill)を提出しました。この法案は、スピード可決される見込みで、早ければ5月15日に施行され、その後、関係当局からこの法律に基づいた方針が発表される予定です。まだ国会で審議中ですので、現時点分かっている内容をご参考程度に紹介させていただきます。

はじめに、現行の移民法は、基本的に個別の状況に基づいた審査制度となっており、非常に限られた権限しかなく、柔軟にかつ包括的に対応できる法的枠組みがありませんでした。今回のような国家緊急事態宣言が出され、NZ国内に約350,000人いるとされる暫定ビザ保持者(ワーク、学生、観光など)が、COVID-19による影響でビザ条件を変更せざるを得ない状況に置かれた場合であっても、基本的にVariation of Condition(ビザ条件変更)の申請が必要となります。しかしながら、現実的に、移民局の稼働率は、Level 3で20%、Level 2になっても50%ほどをされており、これらに加えて、COVID-19で優先順位の高い新規ビザ案件、すでに申請されていた各種ビザの累積残務を処理できるキャパシティがありません。そこで、NZ政府として、移民法を暫定的に修正し、特定のビザ保持者の条件を包括的に変更できるような制度を整えようとしています。

この法案の目的ですが、上記で述べたように個別審査のままでは移民局の処理業務が追い付かず、現行法制度そのものが意味をなさなくなってしまうこと、また、この法案は1年間の期間限定とされていることの2点から、この緊急事態の下では合理的な動きであると考えています。

なお、この法案の下で、移民大臣が権限を行使すると、特定クラスに該当するビザ保持者の条件を包括的に修正、変更、キャンセルなどが可能になるようです。下記のような、事例が取り上げられていました。

  • 特定の雇用主の下で働くワークビザ保持者(Essential Skillsなど)へ、雇用条件を緩和し、雇用主や地域に縛られず、柔軟に就労ができる措置
  • NZ国外からビザを申請をされて承認されたが、NZへ渡航が出来なくなってしまった方へ、最大6カ月間のビザ期限の延長措置
  • 病気などが理由でビザ申請が出来なかった方へ、ビザを認める措置
  • ビザ申請で必要な資料をすべて集めることが出来ない方へ、申請資料の一部免除措置
  • 特定のカテゴリーの新規ビザや永住ビザのEOIなどの申請受付を、最大3か月間延期措置

この法案が可決され、NZ政府から方針が発表され次第、報告させていただきます。

小規模ビジネス救済、1年間無利子ローンが5月12日より開始

2020年5月8日

2020年5月12日赤字部分更新

12週間分の従業員の給料を補助する政府からの救済「COVID-19 Wage Subsidy」を3月提供時に迅速に申請した企業は、6月中頃には、その補助金を使い果たす事を見込み、多くのビジネスが未だにフル活動でビジネスを再開できない中、政府は新たなローンスキームを発表しました。

対象は、コロナウィルスで打撃を受けた従業員50人以下の小規模ビジネスです。政府は、ビジネスを継続するために不可欠な店舗/事務所の賃貸の支払いなど、運営費キャッシュフローを維持すべく、最大で$100,000の1年間無利子ローンの提供を発表し、現在の申請期間は5月12日~6月12日の1カ月間のみとなります。

このスキームの概要

• 貸付額は、全申請企業に提供される$10,000をベースとし、フルタイム従業員一人に対し$1,800を加算し算出される。

• 貸付から2年間は返済を求められないが、1年以内に返済を完了すれば無利子。

• 2年目からは3%の利率が加算されていき、ローンの返済期限は5年。

適格条件はCOVID-19 Wage Subsidy と同等となり、申請ビジネスは、貸付金がビジネスの運営に使用される事などを申請時に宣誓し、政府との正式な契約を結ぶ事となります。
Inland Revenueがこのローンスキームを管理し、貸付額は「COVID-19 Wage Subsidy」の受領額をInland Revenueのサイトで入力する事で瞬時に算出されるシステムのようです。COVID-19 Wage Subsidyと同様、今回のローンスキームも迅速に支払われる事と予測されます。

政府と銀行が提携、コロナウイルスで打撃をうけたビジネスや家主へのサポートパッケージ

2020年4月20日

政府は3月26日のロックダウンに入る前に、既に打撃を受けている雇用主や従業員を救済すべく、Wage Subsidyの提供を開始しました。そして、その申請に早急な支払いおこない、4月17日現在で、$10 Billionを費やし、多くの市民の生活保護を行いました。

今回ご紹介する二つサポートパッケージの「Business finance guarantee scheme」と「Mortgage Holiday Scheme」は、こちらも政府主導で開始され、主にビジネスの運営やキャッシュフローを長期的に保護するためのものであり、Wage Subsidyと併用することができます。Business finance guarantee scheme は80%のリスクを政府が保証し、最大$6.25 Billionのローンを銀行と提携し成立させたサポートパッケージとなります。

最大で$500,000のローンを受ける事のできる「Business finance guarantee scheme」に関して

このスキームは、年間売上が$250,000~$80,000,000 のNZをベースにする中小企業が利用できるローンスキームで、NZの登録銀行すべてが、提供銀行として参加しています。このスキームで借りれる最高貸付額は$500,000と設定されていますが、個々の銀行はコロナウイルス影響を考慮し、独自の査定プロセスを踏み、貸し付け金が決定されます。

銀行からは今までの会計関係の書類を会計士から入手することを求められると思われますので、どこの銀行でもいいとは思われますが、すでに使っておられるある銀行に申し込む事が、ローン査定プロセスである、「信頼」や「業績」などを確認しやすく、申請が前に進みやすいかと考えられます。

このスキームの概要/注意点

  • ほぼすべての職種がこのスキームの対象であるが、農業や、Property Developmentなどは、このスキームでローンを組む事ができない職種の一つ。Excluded activities Listはgov.nzで確認ができる。
  • このスキームで借りた金額は3年以内に全額返済の必要があり、返済できる金額を申し込む事。
  • 2020年9月30日までがこのスキームの申請期限。
  • 銀行により利子や諸条件が事なるので、詳細は銀行に確認する事。

最大で6カ月のローン返済を延期 できるMortgage Holiday Schemeに関して

不動産などを抵当にして銀行に負債のある個人や中小企業が、コロナウイルスの影響で、収入に打撃を受けた際に、元本と利子両方のローン返済額すべてを、最大で6カ月間ストップできるMortgage Holiday Schemeの提供がNZ登録銀行からされる事になりました。

このスキームの最大の意図は、コロナウイルスの影響で月々支払っているローンの返済できない状況に陥った借り手が、住む場所を失わせない事であり、言い換えると、銀行はMortgage Saleで、担保の家を簡単に売却できない、となります。

このスキームを申し込まれる前にご理解頂いたいことは、支払いをストップしている期間も元本残金に対しての利子は加算されていき、利子がその期間「無し」になるわけではない、という事です。すなわち、支払いを再開する際の残金は、ストップする前の残金より増えており、最終的に支払う合計はこのスキームを利用する前より増えるということです。

このスキーム以外の救済案を提示している銀行は多いようですので、もし少額なら返済が可能であれば、「一定期間の元本の返済のみストップし、利子は払い続ける、(元本残金は増加を防ぐ)」、又は、「ローン期間を長くし、月々の返済額を少なくする。」などの救済案を提供しているか、ローンを組んでいる銀行に確認してみる事も可能かと思います。

支払いが厳しなってきたら、まず、銀行のご相談いただき、それらが提供するオプション検討されたら良いかと思います。

 

コロナウイルス(COVID-19) 影響下の商業物件の賃料

2020年4月16日

 

コロナでロックダウン中に、商業物件の賃料は支払うべき?リース契約書(Deed of Lease)の条項27.5をまず確認

大半の事業主は、リース契約を大家とかわし、店舗や事務所を、賃貸されているかと思います。

その事業主の中には、事務所を自宅に移し、Remoteで仕事をこなし、ビジネスにさほど影響を与える事なく、ロックダウンを過ごせる職種もあるかと思います。一方、カフェ、レストラン、美容室などの経営者は、ロックダウン中、収入がゼロとなり、(政府の要請で店舗のアクセスできない)この状況下で、賃料を支払わなくてはならない状況に直面します。

まず確認しなくてはならないことは、大家と交わしたリース契約(Deed of Lease)が最新版のSixth
Edition 2012 (4)かをリース契約書の右上に記載があることと、そのリースの条項27.5“No access in an
emergency”が削除されていない事です。

2011年のクライストチャーチ地震

No access in an emergency の条項が2012年に導入された背景には、2011年のクライストチャーチ地震あります。この災害後、店舗/事務所の大家からの賃貸の救済は、建物の破損が原因でビジネス続行が不可能になったテナントへのみでした。一方、Redゾーンに位置した、破損のなかった店舗は、店舗にアクセスができない状況であるのに、アクセスがきるまでの期間(テナントにより数カ月~数年の間)、法的には賃貸の支払い義務が発生しました。

その後、ニュージーランドのリース契約書のテンプレートを作成するオークランド弁護士協会は、災害(今回のような、Epidemic含む)でアクセスでなかったテナントを救済できる内容に更新したした契約書を発行しました。

Fair Proportionに関して

この条項には「店舗/事務所にアクセスできない期間、通常支払っている賃料のFair
Proportionが割り引かれる。」と記載があります。そこで、このFair Proportionとはどのように確定されるのでしょうか?

例えば、Remoteで営業が継続でき、収入にさほど影響がでなければ、賃料の割引は少ないので、大家はFair Proportionはゼロに近いと主張するかもしれません、一方、ロックダウンのよって全ての収入を奪われてしまったテナントには、割引幅を大きくすることがFairと言えるでしょう。

では、大家側の立場から考えてみましょう。もしテナントが賃料を支払ってくれなければ、ロックダウンのさなかでも物件に付随するMortgageやRatesなどの支払いは行わなくてならず(ただ、6カ月間のMortgage Holidayは申請できるかもしれませんが)、賃料をあてにしている大家は大変困るかもしれません。

Fair Proportionを確定させるためには、まず、大家へアプローチをし、お互いの状況を理解したうえで、納得のゆくFair Proportionを見つける事かと思います。

では、No access in an emergency条項がなければ?

リース契約書でまずその条項の代わる内容が記載されていないかを確認する事をお勧めします。もし該当条項がなかったとしても、交渉ができないわけではありません。

大家には賃料の割引の法的義務はありませんが、大家も、テナントに継続してビジネスを続けてほしいはずです。賃料の支払いが苦で破産されても困るかと思います。

賃料の支払いが難しい状況であれば、まずは大家にアプローチをし、可能な賃料救済がないかを尋ねる事はできます。大家よれば、割引に応じてくれるかもしれませんし、それが難しければ、ロックダウン中の賃料の延期や、分割で支払うなどの提案がされるかもしれません。

賃料の延滞による立退き通告  ルールの変更

注意しなくてはいけない点は、契約書上で支払い義務があるテナントが、賃料支払日に支払いを行わなければ、「延滞」となります。

延滞をすると、大家はテナントに立退き通告を出すことができます。現行の法律でのプロセスは、支払日から10営業日間賃料の支払いがされていなければ、大家は立退き通告を出すことができ、その通告は、10営業日以内に賃料の支払いをしなければ、リース契約がキャンセルされ、立退きを求めることが出来るとされています。

よって、支払日からは最短で20営業日まで延滞となれば、リース契約がキャンセルされる可能性があるという事です。

政府はコロナウイルスで打撃を受けたビジネスを救済すべく、商業物件の賃料の支払いに関するルールの変更案を提供する予定です。この記事の執筆時点ではまだ法律になっていないと言うことです。

それは、立退き通告が出せる、日数を10営業日から30営業日へ伸ばし、さらに、通告で通達する立退きの日数も10営業日から30営業日と伸ばすものです。(支払日か最短60営業日)。ただ、このルールの変更により、差し当たりテナントを立退きから救えますが、リース契約の基づく延滞金や罰金からテナントを救うルール変更は政府からの提供は今現在はないようです。

では、この変更案が執行後、すでに大家からだされた通告の位置づけについてですが、その通告での期間は新しいルールが適用され、支払い期限が伸びる事になると現在は案内されています。(通告から30営業日)

この状況下で、賃料の支払いが困難と予想されれば、大家と早い時期にコミュニケーションをとる事が、商業物件の賃料に関する交渉のKey Pointではないでしょうか。そして、首相のメッセージ‘Be Kind, Be Patient and to look after one
another”を忘れずに、お互い納得のゆく、救済策を練っていく事かと思います。

COVID-19 Wage Subsidy (政府補助金)について

4月16日

 

NZ政府は3月25日にCOVID19への警戒レベルを最高の「レベル4」へと引き上げ、必要最低限の買い出しや、Essential Serviceとされる業種の人の外出を除き、原則として外出禁止(ロックダウン)となりました。

警戒レベルが設定後、ロックダウンへと進む過程で、雇用主とその従業員の生活を保護すべく、政府はビジネス救済対策、「Covid-19 Wage Subsidy」を実行しました。日本人経営者を含む多くのビジネスがこの補助金を申請し、その従業員は受領を受けていると思います。

そこで、今回「Covid-19 Wage Subsidy」に関連して、「税金の処理の仕方」に関してと、「Covid19 Wage Subsidy補助受領者の公表」に関してご案内します。

1. 税金の処理の仕方

この補助金を受領した会社、Solo Trader, Partnership のPartnerが、疑問に思う税金に関しての質問をQ & A形式で税金処理の仕方を紹介します。

  • 受け取った補助金にGSTを支払う必要はありますか ?

A:GSTの対象金ではないので、支払いの必要はありません。

  • 受け取った補助金を収入として処理する必要がありますか?

A: 受け取った補助金はExcluded Incomeとして税金対象外の収入とみなされます。すなわち、この補助金に関しては法人税等の支払いの義務はありません。

  • この補助金を含む賃金の支払いの際、PAYEの差し引きはどうしたらよいですか?

A: 通常の賃金の支払いと同じように、PAYE, Kiwi Saver、Student Loanなどを差し引いて支払ってください。雇用主は、受け取った補助金を従業員へ支払う際、通常の給与と同じ扱いでPAYEの支払い義務があります。

  • では、自営業主(Solo TraderPartnershipPartnerなど)がこの補助金を、個人の給料として受け取る場合の税金処理どうなりますか?

A: 自営業主が、個人の取り分として受け取る場合は、収入があったとみなし、税金対象になります。

2. Covid19 Wage Subsidy補助受領者の公表

政府のMinistry
of Social Developmentは4月6日に「Covid-19 Wage subsidy」補助金を受領したすべての雇用主と、それが申請した従業人の数、受領合計額がサーチできる、公開サイトを発表しました。

https://services.workandincome.govt.nz/eps

その背景としてこのビジネス救済対策は、Covid19蔓延阻止対策中に、雇用主が可能な限り通常の給料の支払いをサポートし、従業員(Sole
Traderや自営業の場合は自身に対して)の最低限の生活を保護するという強い意図があると思われます。これを義務づけるために申請企業名が一般へ情報公開されることへの了承と下記の内容の宣誓を申請者に求めています。

  • 従業員のOrdinary
    Wage 又はSalaryの80%を可能な限り支払う
  • もしそれが不可能であれば、受け取った救済金全額を従業員に支払う。

今回の公表には、ビジネス救済対策、「Covid19
Wage Subsidy」の透明性を第一とし、上記の宣誓にもかかわらず、補助金を受け取りながら賃金を支払わない雇用主を阻止する意図があります。

雇用主がWage
Subsidyを受け取ったかどうかを従業員がサーチする際の注意点:

  • Trading nameやCompany Nameでサーチする事。
  • Trading nameとは、企業が一般に知られれている名前 (例:飲食業であれば顧客に知られている店名など)
  • Company NameとはNZの会社登録があれば、Company
    Officeへの登録会社名(ASB
    Service Limited など)

「殺人犯のかつら ―人権の侵害訴訟をめぐってー」後日談

昨年のオークランド日本人会会報冬号に上記のタイトルで書きました記事を覚えていただいていますか?若くして禿げている殺人犯(Phillip John Smith)が「刑務所の係官が私のかつらを奪ったのは私の表現 の自由(freedom of expression)への人権侵害だ」とオークランド高等裁判所へ訴え、彼はこの裁判に勝利しました。ちなみに彼の犯した犯罪は近所に住んでいた少年に何年にもわたって性的いたずらを 続け、これに怒った彼らの父親を殺した殺人犯です。さらにはその後仮釈放された時に変装して海外逃亡を企てました。再び逮捕された時かつらを取り上げられ、禿げ頭の写真が当時の新聞、テレビに出ていました。

後日談

その後刑務所側がthe Court of Appealに上訴していました。the Court of Appealはかつらをつけていたいと言うSmithの願いは表現の自由の権利への行使(engage)ではないと結論し、高等裁判所の判断を破棄しました。その後刑務所側が刑務所内でのかつらをつけることを認めたのでこの権利についての議論はなくなったとしています。

ちなみにどのような考察がこの新しい判決の中でされていたかに興味のある人もいるかと思いますので、その一部を紹介しましょう。曰く、重要な理論的根拠はかつらをつけることがそもそもSmithにとって表現すべき情報内容を含んだ行為と言えるか。この制定法 (New Zealand Bill of Rights Act 1990) における表現の自由は「非言語的象徴的」表現行為 (non-verbal symbolic expression)を含めて広く解釈されるべきだ。確かに髪型が文化的、宗教的もしくは政治的メッセージを伝えると言うこともあり、法の下の表現的行為にあたることもある。(すなわち言葉による主張だけでなく何らかの行為も表現の自由の範囲として捉えられるべきだと言うことです。)しかしながらこれは意見や情報を伝え合う何か (communicative of something) を含んでいなければならない。この意味でかつらをつける行為はSmithが主観的にどう感じるかだけで、誰かに伝えるべき何らかの情報を含んでいないので法律が保証している「表現の自由」の表現にあたらない。

私的な感想

常識的な判決だとは思いますが、これを読んで考えることが二つあります。

一つは一人の納税者として思いです。この裁判にかかる検察や裁判所への費用はもとよりSmithの裁判費用も訴訟経費扶助(legal aid)から支払われている可能性があります。すなわちこの裁判のすべてが税金でまかなわれていると言うことです。我々が支払った税金をもっと有効に使ってほしいと言う素朴な思いが一方にあり、とは言うものの誰かれなく一人の人権が軽く扱かわれればいつかじわじわとみんなの人権がむしばまれることになるという思いが交差します。

もう一つは裁判官には失礼ながら人の判断とはこの程度だと言う思いです。ニュージーランドでは何年もの弁護士経験、主に法廷弁護士の経験を経て裁判官になれる制度ですので、裁判官は常識を持ったとても聡明な(intelligent)方々です。ちなみに常識を持ったという言い方をしましたが、これは何かもしくはどこかの国と比べている訳はありません。弁護士であったときに常識がなかったとすればクライアントが来ませんので、弁護士であり続けることが出来なかったはずと言う程度の意味です。ともあれこのような素晴らしい見識を持つ裁判官でも同じケースに全く異なる判断を下す事実は知っておく価値があると思います。

弁護士の仕事で訴訟に関するケースで出くわしますと「このケースは勝てそうですか」とクライアントからよく聞かれます。正直な答えは「やってみないと分からない」です。「これじゃ答えになっていない」「頼りない弁護士」と思われるのはよく承知しますが、明らかに勝てそうなもしくは負けそうなケースは裁判に上がってきません。負けそうな側が裁判を回避しようと和解を呼び掛けてくるからです。これに対して観点によって双方に言い分があるときは、裁判に進むことになりますが、担当する裁判官によってどちらの言い分に重きをおくかが異なり結果が変わってくると言うことかと理解しています。

新たな裁判

上訴を経てこの裁判は終わりましたが、今年になってこのSmithともう一人の「悪名高き」受刑者Arthur Taylorが起こした新たな裁判がニュースになっていました。刑務所で209人の受刑者を対象に行われた身体所持品検査(strip-search)についての訴訟です。彼らによればこの身体所持品検査は2016年10月に刑務所内で起こった冷酷な襲撃への報復として行われた。報道によりますと6人の監視員が怪我をし、3人が刺し傷を負ったそうです。

SmithとTaylorはオークランド高等裁判所で次のように弁論したそうです。「体中を調べられ多大なる屈辱を与えられた。」「見くびられ、人間性を奪われたと感じた。」「すべての受刑者への謝罪と一人当たり600ドルの賠償をせよ。」「刑務所は見本を示すことによって受刑者を更生させることに責任がある。」「すべての人の権利を尊重する例を示すことで、他者の権利への尊重を徐々に教えていくことが刑務所にとってとても重要なことだ。」

さて皆さんが裁判官ならこの裁判にどんな判決を下し、どんな判決理由を述べられるでしょうか?

NZ Relationship Property (共有財産)Report 2017よもやま話

仕事柄いろんな分野の法律問題にかかわっていますが、Separationに伴う財産分けもその一つです。Property (Relationships) Act 1976と言う名の制定法がこれを定めたものです。これらの問題は早く解決する場合は3か月くらいで終了しますが、交渉が長引くと1年以上かかることもあります。したがって1件か2件は常にこの案件にかかわっている状況にあります。

この分野の法律は日本のそれとかなり異なりますので、この仕事にかかわる時はNZの法律の説明がまず初めとなります。やってみますとこの分野の日本の法律を知っている人にNZの法律を理解してもらう方が知らない人へのそれと比べて難しいことを経験しました。このいい例がなんと日本の弁護士さんです。この分野を扱う日本の弁護士さんは日本の法律が合理性を持っていると自負されていますので、初めて聞くNZの法律を理解されると言うよりは納得されるのに時間がかかるようです。

交渉の伴う法律業務は一般にクライアントと弁護士間の意思疎通がカギとなります。このために初めはクライアントが持っている日本とNZの法律もしくは一般知識を把握した上で説明していくことが必要です。この知識の中には日本のそれと混同されている人もまれではありません。Separation自体は穏やかな問題ではありませんので、これに至った理由などもお聞きしてそのクライアントの気持ちや性格を踏まえることが結果的にNZの法律をきちっと理解してもらえることにつながります。そしてこの法律理解を通してクライアントと弁護士間の意思疎通が形成され、相手側との交渉力を高めることに繋がります。

さてこの分野の仕事にかかわる中で一般的傾向と考えられる事柄に気付くことがありましたが、何百件ものSeparationに伴う財産分け事案を扱ってきた訳ではありませんのでそれを公に話すのは控えてきました。

最近この拙文のタイトルにありますNZ Relationship Property Report 2017がニュージーランド法律協会によって公表されました。この報告書は400人近くの家庭法を専門とする弁護士がアンケートに答えたものです。この種の研究としては包括的な調査と言えそうですし、やはりそうだったんだと思うこともありましたので、この中からいくつか拾って紹介してみます。

迅速な解決

多くの弁護士がこれらの問題解決に対して重点を置いているのは交渉(negotiation)です。交渉だけでは問題解決が見えてこない場合にはより効果的な解決方法が必要となってきます。この方法として彼らが重要であると位置付けているのは時間と費用のかかる正式裁判ではなく、この分野の専門家である判事を含めた家庭裁判所での速やかな解決(speedier resolution)です。

共有財産法とトラスト法

回答を寄せた60%近くの弁護士は共有財産(Relationship Property)とトラスト法の共通領域についてのよりいっそうの確かな見通しを求めています。これにはちょっと解説が必要です。トラスト法は英米法ではかなり昔から存在する財産に関する法律です。これに対して共有財産の分け方に関する法律は比較的最近に発展してきた分野の法律です。私が弁護士になった後でもかなり大きな改革がなされています。一般に新しい法律が導入されるときには今まである法律との整合性、すなわち矛盾が生じないかどうかは十分に吟味されます。しかしながら「現実は小説よりも奇なり」がどこの世界にもあります。実際のケースが裁判に上がってきますとRelationship Property法でみるとAの結論になるがトラスト法でみるとBの結論が導けると言ったことが起こります。したがってこのようなケースには「裁判官次第です」と言ったアドバイスしか弁護士はできないことになるのを懸念しています。通常これらの問題は判例が積み上げられて見通しの確かさが確保されるようになっていきます。

隠される財産

財産分けが弁護士の手に任されますと交渉の初めの段階でdisclosureと呼ばれる財産の公表をお互いにします。人間関係がうまくいかなくなった時にSeparationが起こり、その後の財産分けですから配偶者が知らないと思われる自分の財産を隠そうとすることが起ります。これは実は私が結構出くわす難しい問題でもあります。結婚してニュージーランドへやって来た女性の場合、夫から手渡された生活費以外は夫がいくら稼いでいて、生活費以外のお金がいくらあるのか、どのように貯蓄されているのか、他の何に使われているのかをよく分かっていない人がいます。

この分野を専門とする弁護士はdisclosureされた財産を法律に基づいて公平に分けることはできますが、隠されている財産を見つけて指摘するのは難しく、弁護士の仕事外のことになります。この問題に対処するために64%の弁護士が財産隠しをした者への厳しい罰則を求めていることから、この問題が現実に多くあると言うことでしょう。

Separationと子供の権利

財産分けを定めたProperty (Relationships) Actの中で、財産分けの決定を下す裁判所に対して子供の権利を考慮するように明確に謳われています。しかしながらほとんどの弁護士は財産分けの過程でこれが考慮されていないと指摘しています。補足しますと子供を誰が日常的に面倒をみるかなどを決めるときには子供自身の権利や意見が大いに尊重されていて、これを実現するために裁判所が子供のための弁護士を指名することもあります。財産分けの段階でも子供の権利を考慮せよとのことのようです。

典型的な離婚者像

この調査の中で見えてきた共通したケースについても記されています。結婚歴が10年から20年、年齢は40歳から49歳、共有財産の価値が$500,000から$1 millionの人が弁護士にアドバイスを求める典型的な人々だそうです。このことは中年の危機(midlife crisis)が今も生きているとコメントされています。ちなみに辞書の中の説明によりますとmidlife crisisとは「中年期に起こる自信喪失、価値観への不安」「特に男性が老化を自覚して無気力になる」だそうです。

最近の傾向

そのほかの興味ある傾向として50歳以上で離婚した人(silver splitters)は結婚前の財産に関する同意書(prenuptial agreements)についてアドバイスを求めることが増えているそうです。もちろんこれは再婚に備えてのことです。この傾向は今後も続き、別れた配偶者との間の子供(成人)との絡みで弁護士にとっては「新しい挑戦」をもたらすだろうと記されています。

離婚の理由

典型的な離婚の理由は愛情の減少(67%)、不倫(52%)だそうです。ただし最近ニュージーランド国中で広く認められる傾向としては家庭内暴力(33%)、アルコールや薬物乱用(30%)などの深刻な問題も反映しています。

世の中の変化に合わせて法律も進歩していかねばならない傾向はこの分野でもより強く求められていると言うことが出来るかもしれません。