Jury Service 陪審員召喚

Jury Service 陪審員召喚

(ニュージーランド法務省発行資料)

ニュージーランド日本法律問題研究会
翻訳:神 谷 岱 劭(J.P.)
監修:西 村 純 一(弁護士)
編集:松 崎 一 広

陪審員とは
陪審員は裁判所の審理に参加し、証拠や証言を吟味し、そして、陪審員の評決(決定)を下すために無作為に選出された12人によって構成されるグループです。

陪審員の任務は法廷での証拠をもとに何が事実であるかを認定し、裁判官からの法律上の助言に従って、その事実に対して法律を適用して正しい評決を答申することでです。ほとんどの場合、刑事裁判において採用されてます。

陪審員をすることの重要性
陪審員制度では、皆さんが法制度上の重要な役割を務めます。それは社会正義を実現することです。全ての陪審員はその義務を免除されない限り、公正な判断が下されたことを保証する責任を社会に対して有します。

陪審員をしなければいけませんか
はい、これは義務です。陪審員の義務を免除されるか、欠格事由があるか、その他正当な理由があるとき以外は、陪審員を務めなければなりません。もし、正当な理由なく陪審員の召喚に応じないときは300ドルの罰金が科されることがあります。陪審員が免除される例としては、十分な英語力がないこと、仕事に著しい支障をきたす場合、育児上の責任、信仰上の理由、その他の不都合によって苦痛を被るような場合です。また、65歳以上の方で陪審員をしたくないとき、あるいは過去2年以内に陪審員を務めている場合は、申請によって義務が免除されます。

陪審員の免除を申請するには
もし、陪審員を免除される正当な理由があると思うときは、ニュージーランド政府の法務省から送られてくる「Jury Summons(陪審員召喚状)」の回答用紙の第C部にその理由を記入して、速やかにそれを裁判所宛てに提出しなければなりません。職場を休むことで雇用者が大変困る場合は、雇用者にその事情を裏付ける文書を書いてもらい証拠とする必要があります。

陪審員の義務・・・公平と守秘
陪審員は法廷での審理において公平であるべきで、偏見を持たないで証拠や証言に耳を傾けなければなりません。証拠や証言を全て聴取し終えるまでは、その事件についての判断を下してはいけません。その事件の裁判中は、共に選出された陪審員同士を除き、そのほかの誰とも当該事件について議論をしてはいけません。陪審が終わった後でも、自分が陪審した事件について、陪審員控室においてどんな内容が協議されたかを誰にも話してはいけません。

陪審員をする前に勉強しておくべきことは
何もしなくて結構です。あなたは法廷に提出された証拠をもとに、その事件の事実を認定するだけです。事件に関係する法律については裁判官から解説されるので、陪審員は証拠や証言を吟味し、実際に何が起こったかだけを決定します。裁判中には紙とペンが支給されるので、自分でメモを取ることができます。陪審員は当該事件の事実審査において正しい評決を答申をするだけで、判決(たとえば罰金刑か禁固刑か等)がどのように下るかについては考慮する必要はありません。適切な判決を決定する責任は裁判官が負います。

どうして私が陪審員に選ばれたのか
各裁判所の陪審員名簿は、当該裁判所管轄内の選挙人名簿を元に、そこから無作為に選ぶことによって作られます。あなたの名前はその陪審員名簿から無作為に抽出されたものです。

裁判所ではどのように陪審員を選ぶか
裁判所では、係員が各事件別に陪審員の候補者を抽選で選出し、どうするかを指示します。陪審員候補者は指定された法廷に移動し、まず傍聴席に座ります。一人づつ名前を呼ばれて傍聴席から陪審員席まで移動する間に、弁護人から「challenge(異議あり)」の声がなければ、陪審員席に着席して陪審員となります。この「異議あり」の発言は、特に根拠なくされるものですので、言われても全く気にすることはありません。

陪審員として最初の日は何をするか
陪審員召喚の初日は、少なくとも午前中は裁判所にいると想定してください。さらに、直ちに始まる裁判の陪審員として選ばれた場合には、その裁判の公判中は終日裁判所にいることを要請されます。裁判所で一定時間待機しなければならないこともあるので、読み物などを持ってきてもよいでしょう。
もし、陪審員として選ばれなかった場合、今度はいつあなたが必要になるかについて後日通知されることがあります。その通知が何日後になるかは予測できないので、その週の何日間かはお待ちいただくことになります。裁判所によっては陪審員のためのテレホンサービスがあり、陪審員がいつ出廷を要請されているかご案内しています。このテレホンサービスの電話番号は「Jury Summons(陪審員召喚状)」に書かれています。出廷する必要がない時に裁判所へ出向く無駄を省くためにも、陪審員の期間中は、毎晩このテレホンサービスで確認することをお勧めします。

被告人や証人を知っているときは
裁判が開始される時、被告人と証人の名前が読み上げられるますが、もし、被告人や証人を知っていたり、何らかの関係を有する場合は、直ちに裁判所職員にその旨を告げなければなりません。

陪審員の期間は
通常は1週間くらいですが、裁判の審理が1週間より長引くこともあります。もし、審理日程が1週間以上になることが見込まれる裁判の場合は、陪審員召喚状にその裁判がどの程度長くかかるかを告知されます。担当する裁判によって、その週に行われる審理に幾度も出廷を要請される陪審員がある一方で、一度も呼ばれない陪審員もいます。

拘束時間と食事について
裁判は通常、午前10時から午後5時までの間で開廷され、午後1時から午後2時15分までが昼休みとなります。午前と午後には短時間のテイー・タイムがあり、陪審員控室でお茶やコーヒーが供されます。食事については、評決のために陪審員控室で協議中の場合を除いて供されません。

建物内は禁煙
裁判所の建物内は禁煙です。

服装について きちんとした服装が望まれています。

急用ができたときは
直ちに裁判所の職員に申し出てください。

裁判所へ出廷しなかったときは
陪審員の義務を免除されていないにもかかわらず、裁判所に出廷しなかったときは300ドルの罰金が科されます。

どのような報酬が支払われるか
裁判所にいる間の報酬として半日毎に31ドルが支給されます(長期に裁判が行われる場合、および午後6時以降も裁判所にいる必要がある場合には支給率が増額されます)。自宅と裁判所の往復に要した交通費(公共交通機関の運賃、自家用車を使用した場合は距離手当て)も支給されます。もし、適当な公共交通機関や自家用車も利用できる状況になく、やむを得ずタクシーを利用した場合はその領収書を払戻申請書に添えて請求することにより、払い戻しを受けることができます。これらの支払いは、陪審員としての仕事が完全に終わった後、まもなく小切手にて郵送されてきます。 もし、あなたが福祉手当や補助金を受給している場合は、これらの支払いが福祉手当や補助金の受給資格に影響することがあるので、所轄のWork and Income Office(社会福祉事務所)へ連絡しなければなりません。もし、あなたが雇用されている勤労者である場合は、陪審員として出廷する法的な義務を果たすことについて雇用者と直ちに相談する必要があります。
もし、あなたが経済的に困難な状況にある場合は、陪審員報酬の増額を申請することができます。この申請の方法は裁判所の職員が説明します。その際には、通常の収入額の詳細など、事情を証明する情報を提供する必要があります。

駐車場の利用について
裁判所へ自家用車で来所し、付近に無料駐車場が利用できない場合は、駐車料金の払い戻しを受けることができます。払戻申請書に必要事項を記入し、支払った駐車料金の領収証をその証拠として添付してください。(陪審員召喚状には最寄の駐車場の位置が例示されています)

託児費用を請求できるとき
陪審員を務める間、通常あなたが育児をしている子供を第三者に預けた場合に限り、託児にかかった正当な費用を請求することができます。もし、商業的な子守りサービスを利用した場合は、その事業者からの請求書の写しを添えて払戻申請書を提出してください。 商業的ではない所(例えば、近所の人や友人または親戚など)に子守りを頼んだ場合は、払戻申請書にその旨を記載して提出します。 商業的あるいは非商業的な託児費用として認められる金額の詳細については、裁判所にご相談ください。この支払いは、陪審員としての務めが完了した後で、小切手にて郵送されてきます。

何かお困りのときは
裁判の前、または裁判中に何らかの助けがいる場合は、裁判所の職員に申し出てください。
もし、担当する事件が耐えがたく、嫌悪感をもよおすようなものであったときは、裁判所の職員があなたのためにカウンセリングを手配することができます。

次に該当する場合は陪審員になる資格があり、これを務める義務があります
* ニュージーランドの選挙権者として選挙人名簿に登録されており、そして-
* 当該裁判所から(最も実際的な道順で)30キロメートル以内のところに住んでいる場合。

次に該当する人は、陪審員を務めることができません
*過去に禁固3年以上の刑を受けたか、または最近5年以内に3カ月以上の矯正収監を受けた者。
*国会議員。
*裁判官、治安判事(JP)、弁護士、警察官、刑務官、法務省の職員など司法制度に関与する者。
*精神障害者。

次の事項に該当する場合は、書面によって陪審員免除を申請することができます
* 上記の理由により現在は応じられない場合。
* 年齢65歳以上で陪審員をする意思がない場合。
*仕事や家庭の事情、健康や身体上の理由、その他の事情により、陪審員をすることによって本人もしくは第三者に著しい困難や不利益が生ずることを信ずるに足る合理的な理由があるとき。
* 宗教上の理由。
* 過去2年以内に陪審員を務めたことがあるか陪審員召喚に応じている場合。

重要事項
陪審員を務めるためには英語を十分に理解できなければなりません。もし、あなたが英語を理解出来ないならば、陪審官にその旨を申し出ることで陪審員を免除されます。

※この文書はMinistry of Justice発行のパンフレット「Information on jury service」を元に翻訳・編集したものです。文責および著作権はニュージーランド・日本法律問題研究会に帰属します。 (2008年9月)
この原稿はカンタベリー日本人会会報2008年7月号ならびにオークランド日本人会会報2008年10月号に掲載しました。