ニュージーランドの遺言書にまつわるQ&A

ニュージーランドの遺言書に関して、よくいただく質問にお答えいたします。

 

Q1:遺言書は自分で作れますか?

 

A1:遺言書をご自身で作ることは可能です。

遺言書は、そのものだけでは財産を動かすことはできず、遺言書を執行する際に高等裁判所の認可が必要となります。

裁判所から認可を得るためには、遺言書の法律が定める正式な形式を満たしていなけれななりません。

例えば、ご自身で作った後、成人二人の証人の同席による署名が必要で、

その署名証人は相続人であってはいけません。

 

 

Q2:遺言書が無い場合、困ることはありますか?

 

A2:遺言書を残さずに亡くなった場合は、高等裁判所に遺産管理人の申請(Letters of Administration)をすることになります。

この申請が認可されると、相続権利のある人が遺産管理人となり、銀行預金の引き出しなどを行うことができます。

ただし、この手続きは、遺言書の作成よりも手間・時間と費用が掛かります

 

 

Q3:遺言書はどんな時に作るべきですか? 

 

A3:ニュージーランドでは、遺言書は高齢や病気になってからではなく、家を購入した時や結婚した時に作成することも一般的です。

不測の事態に備えて作っておくとよいでしょう。

 

 

 

Q4:遺言書に有効期限はありますか?

 

A4:遺言書に有効期限はありません。

ただし、「最新版が有効」というルールがあります。

10年前に作った遺言書があったとしても、その後書き直しや改めて遺言書を作った時には、

10年前の遺言書は無効となります。

 

 

Q5:遺言書は誰がどのように保管すればよいですか? もしなくしたら、どうなりますか?

 

A5:遺言書の原本は、ご本人や遺言書執行人、弁護士などによって、なくさないように保管されるものです。

必ずコピーをとり、別の人が保管するとよいでしょう。

もし、原本をなくした場合は、裁判所への手続きが必要となってくるかと思われます。

 

 

Q6:遺言書は、夫婦一緒に作るべきですか?

 

A6:夫婦と言えども、別々の遺言書しか作れません。

仮に中身が同じ(Mirror Image)だとしてもです。

ちなみにこれは日本でも同じです。

弊社で遺言書作成をお受けする際は、

お一人ずつお話を伺い、内容に夫婦で異なる希望があったとしても、そのまま反映させてお作りします。

 

 

Q7:日本にもニュージーランドにも財産がある場合、それぞれの国で遺言書を作るべきですか?

 

A7:世界の全財産を1つの遺言書にまとめることも、それぞれの国で作ることも可能です。

日本で作った日本語の遺言書の場合、

ニュージーランドの遺産を動かすには、ニュージーランドの高等裁判所の承認が必要です。

その承認を得るためには、遺言書の翻訳だけでは足りないことがあり、手続きにやや手間がかかります。

一方、それぞれの国で作る場合は、

他国の財産に関しては一切触れない内容にすると、それぞれの国での遺言書の執行はスムーズにいくでしょう。

 

 

Q8:遺言書の中身を考えるとき、どんなことに注意したらよいですか?

 

A8:遺言書は、ある程度の年数に耐えれる書類であるべきです。

したがって今自分に子供がいない場合でも「遺言者が亡くなった時点で生存している子供に残す」と書いたり、

子供が亡くなっている場合に備えて、「孫に残す」と言及するのもよいでしょう。

個人的な理由で「この子供には残さない」と明記する人もいました。

ご自身の意思を落とし込むことができます。

 

Q9:ニュージーランドの相続には、相続税はかからないのですか?

 

A9:ニュージーランドでは、相続税も贈与税(2011年に廃止)もかかりません。

ただし、相続人が日本在住の場合、日本の相続税が課されるかどうかはご確認ください。

 

 

Q10:亡くなった家族が遺言書を残したかどうかがわかりません。どうしたらよいですか?

 

A10:ニュージーランドで遺言書を残したかどうかを見つけるには、

弁護士間の掲示板にて「誰か遺言書の作成に携わった弁護士がいるかどうか」を呼びかける方法があります。

遺言書は存在しないと判断した場合は、

無遺言書として、高等裁判所に遺産管理人の申請(Letters of Administration)をするのが一般的です。

 

 

ローズバンク法律事務所では、遺言書の作成遺言書の執行申請無遺言書の場合の遺産管理人の申請(Letters of Administration)を承ります。

contact@rosebanklaw.co.nz まで、メールにてご相談ください。

高齢社会において大事な委任状 Enduring Power of Attorney (EPA)とは

Enduring Power of Attorney

ニュージーランドの高齢化社会では欠かせない法律的文書『Enduring Power of Attorney (EPA)』をご存知でしょうか?

 

EPAとは、

高齢によって判断能力が著しく低下した場合、

法律上の手続きを行う権限を他者に与える「永続的委任状」のことです。

 

 

Enduring Power of Attorney (EPA)ができること

 

永続的委任状(Enduring Power of Attorney 以下EPA)を作成することは、

あなたが自分自身のことを決定する能力を失った場合(認知症など)に、

信頼できる誰かに、あなたのために法的な決定をゆだねることができる方法です。

 

権限を与えるあなた(高齢者)は"ドナー"と呼ばれ、

ドナーが権限を与える相手(委任される人)は "代理人"と呼ばれます。

 

EPAには『介護と福祉のEPA』『財産のEPA』の2つのタイプがあります。

 

『介護と福祉のEPA』では、

代理人は、ドナーがどこに住むか、誰がドナーの面倒を見るか、どのような治療がドナーに必要かといった問題について決定することができます。

ただし、ドナーが「精神能力を喪失した」場合のみ有効です。

 

『財産のEPA』では、

代理人はドナーの金銭や財産に関する決定をすることができます。

特定の事項や財産に限定することも、全般的な権限とすることもできます。

ドナーが「精神能力を喪失した」後に限らず、ドナーの選択によってEPAを作成した直後から代理人は権限の実行を行うことが可能です。

 

上記で述べた「精神的能力を欠いている」とは、

どのように判断されるのでしょうか? 

『介護と福祉のEPA』では、ドナーが介護や福祉に関する意思決定ができず、理解もできない状態です。

『財産のEPA』では、ドナーが自分のお金や財産を完全に管理する能力がない状態を言います。

判断が難しい場合には、資格のある医療従事者のプロフェッショナル・アセスメントをもって判断されることになります。

 

どんな人が代理人になる?

 

『介護と福祉のEPA 』では代理人は一人、

『財産のEPA』については複数の代理人を立てることができます。

 

多くの場合、ドナーは20歳以上の家族(通常ドナーの息子や娘)や親しい友人などの信頼できる人を選んでいます。

家族の中にその候補者がいない場合は、

受託会社(Trustee Companies)を『財産のEPA』に関する代理人とすることができます。

しかし、受託会社を『介護と福祉のEPA』の代理人にはできません。

 

代理人はドナーにとっての重要な事柄を決定することができる立場になりますので、

絶対的な信頼と責任のあるポジションです。

したがって次のようなことに責任を持つことになります。

・ドナーの最善の利益のために行動する。

・自立を促す。

・ドナーが特定の人を指名している場合、判断を下す時に そのキーパーソンに相談する。

・すべての金銭の記録を保管する。

 

代理人は絶対的な信頼と責任のあるポジション

 

ドナーは、代理人に以下のようなことを伝えておくとよいでしょう。

具体的な財産として、家や車、銀行口座、保険証書など、すべての主要資産のリストを知らせておくのがよいです。

債務およびその他の負債のリストや保険証書、出生証明書などの重要書類の保管場所などもこれにあたるかと思います。

 

代理人はドナーにとって非常に重要な役割を引き受けることになりますので、

代理人が一定の監督や管理を受けるように設定しておくこともできます。

例えば、

・代理人が何らかの決定を下す時に、必ず相談しなければならない人をドナーが指名することができる

・どう判断していいか分からないことが起こった場合は、代理人は指示を家庭裁判所に伺う(申請)することができる

家庭裁判所は、さまざまな権限を持っていて、

ドナーの精神的能力、EPAの有効性、代理人の決定の見直し、代理人の選任の取り消しなどを決定することができるとされています。

家庭裁判所への申請は、家族、エイジ・コンサーン(Age Concern*)、受託会社など関与している人が行うことができます。

 

Age Concern*:65歳以上の高齢者やその家族をサポートする慈善団体。www.ageconcern.org.nz

property

 

EPAの作成方法の基本

 

では、EPAはどのように作成するのでしょうか?

どちらのタイプのEPAにも法的な定形文があり、ドナーが希望する形の項目を選んでいく形式です。

完成したEPAには、ドナーと代理人の両者が署名をします。

ドナーの署名には弁護士やリーガルエグジェクティブ、受託会社関係者の立会いが必要です。

ドナーの署名証人となる人はドナーに文書の効力を説明し、説明したことを明言、確約する法的な証明書にサインしなければなりません。

したがって弁護士がこれを担うことが一般的です。

また、代理人の署名にも成人の立ち合いが必要となります。

 

 

EPAに任意条項を盛り込むことも可能

 

EPAの原本は定形であるため、

ドナーが任意事項やその他特記しておきたい事項があれば、

別添えで指示書を作成することができます。

例えば次のような事項を盛り込むことができます。

 

・ドナー自身が「誰が自分の精神能力を評価するのか」を指名する。

通常指名されるのはドクターです。


・代理人が何かを決定する前に「特定の誰かと協議しなければならない」「特定の誰かに常に情報を提供しなければならない」などの条件を定める。

家族関係者が多数の場合は有益な任意条項となるでしょう。


・『財産のEPA』では、代理人への特権や給付金を与えるかどうか任意で定められる。

しかし、『介護と福祉のEPA』では代理人は報酬を受け取ることが出来ません。


・バックアップの代理人(後任代理人)を加える。

 

 

EPA作成前に既にドナーの精神的能力がなかったら?

 

EPAを作成する前にドナーが判断能力を失った場合、

家庭裁判所での手続きが必要となります。

家庭裁判所は、個人的な世話と福祉に関するパーソナルオーダーを発することや財産管理人※を任命することが可能です。

ただし、この手続きはEPAがあった場合と比べて、時間と費用がかかることになるでしょう。

※Property manager

 

 

EPAが終了する時

 

ドナーは、精神的に能力があれば、いつでもEPAを撤回することができます。

この場合はドナーが撤回書に署名し(立会い人が必要)代理人に通知を送ります。

反対に代理人が役割を引き受けられなくなった時は、棄権通知をドナーもしくは裁判所に送ることによって辞任できます。

家庭裁判所の命令があった場合、ドナーもしくは代理人が死亡した場合は、そのEPAは無効になります。

 

遺言書、Willについて

遺言書(Will)について

日本で遺言書と言うと年配の人だけに必要な書類と考える人が多いですが、ニュージーランドでは若い人でも不測の場合に備えて作っておくのは一般的です。特に結婚した時や家を購入した時に作っておく人が多くいます。

日本人からよく聞かれる質問は「遺言書無しで亡くなると財産が政府に没収されるのか?」と言うものです。

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